七宝技術研究会とは、太平洋戦争後、長らく中断していた日本の七宝業の販路の開拓と技術の保全のために愛知県工業指導所が主導して、県内の七宝窯元らが活動したものです。その活動の一環としてつくられたものが、収録した『七宝前史』で、手書きのガリ版で印刷して、限定的に関係者に配布されたものです。『七宝前史』はその題名が示す通り、日本の七宝が近代に国内外に広く知られることになる前までの七宝の歴史を記したもので、昭和28年に編集されましたが、編者の個人名は不明です。巻頭には、この後に『七宝再興史』『七宝発展史』が続刊される予定と記されていますが現在、それらが編まれた跡はみられないのが残念です。それでも、編集時点ではおそらく唯一といっていい七宝の歴史をまとめたものであり、たいへん貴重な資料です。